社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会
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ここでは、まちがいなく子どもたちが主役!


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 当法人が主要な活動地域とする西成区北西部からはだいぶ南寄りになりますが、西成区千本南の国道26号線沿い、岸里南交差点の西北角に今回の訪問施設「Kids Smile」はあります。2012年8月に開設した児童デイ=放課後等デイサービス/児童発達支援の事業所です。
 放課後等デイサービスは、西成障害者会館とにしなりWingでも実施しており、障害者会館は5歳児と中・高生およびリハビリ利用者を、にしなりWingは早期就労支援型で中・高生を対象とし、Kids Smileは小学生に特化しています。


tomodachi-jikannhyo.jpg〔子どもたちが決める本日のプログラム〕

 土曜日は学校もなく、本来は子どもたちもお休み。でも、Kids Smileでは、「子どもたちの休日は友だちづくり」と考え、身近な地域で友だちと一緒に買い物や料理や遊びなど、さまざまな体験をする生活体験コースを設けています。最初に訪問したのはそんな"土曜日Kids"のお昼どき、みんなで食事の最中でした。
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 早々に食事を済ませて遊びはじめる子、おしゃべりや友だちとのやりとりに気をとられなかなか箸が進まない子、1年生から5・6年生までいるので、落ち着いてとはいかないようです。でも、食事が済めば弁当や配食の膳を各自がちゃんと後片づけします。いわばKids Smileという子どもたちの共同体としての意識が自然と身についていることがうかがわれ、感心させられました。ときにケンカもするけsyokugoasobi-a.jpgど、みんなとても仲が良いとのこと。

 食事が済めば、午後のプログラムまで休憩、というか遊びの時間。スタッフと一緒になってドタンバタン、あるいは飛び跳ね、駆けまわる子......それはそれは賑やかな時間でした。今日の午後のプログラムは、住吉公園近くの噴水がある人工河川での水遊び。これは、午前中に子どもたちが話し合って決めたものです。土曜日Kidsのプログラムは、基本的に子どもたちが発案し、子どもたちで決めることにしているそうです。

 


〔学校でも家庭でもない、地域で過ごす第3の場〕tomodachi-meeting-thumb-350x196-2316.jpg 

 さて、噴水のある川までは2班に分かれ車で行きます。班分けもミーティングで決めます。車で20分とかからない場所ですが、おやつのお菓子も積み、途中、ビーチサンダル代わりのクロックスも買い込み、ちょっとした遠出気分。水辺につくまでのこんな時間も、子どもたちにとって気持ちのはずむ体験にちがいない。水遊びは、まあ、tomodachi-mizuasobi03-thumb-350x196-2320.jpgてんでばらばら、水鉄砲で水を掛けあう、川をバシャバシャ歩き回る、水をせき止める、水に入るのをこわがる子もいましたが、服までびしょびしょになる子も......。おやつの時間には、さすが遊び疲れたのか、みんな水辺に並んで座りちょっと放心したような風でしたが、満足そうなとても好い時間が流れていました。

 こんな光景、どこかで見たような気がします。たとえば町内の子ども会などで、地域の大人に引率さtomodachi-mizuasobi08-thumb-350x189-2324.jpgれて遊びに出かけたときなど。年齢も、男女、障害の有無なども関係なく、みんな等しく地域の子どもとしてあつかわれ、大人の言葉で言えば、深い連帯意識に抱きしめられているような安心感に包まれていたように思います。そんな安心感のなかで、子どもは自由を感受し、豊かな感情、個性をはぐくむことができるのではないか。子どもたちを見ていて、懐かしさとともに何か得したような気持ちなりました。


cooking-01-thumb-350x196-2329.jpg Kids Smileは、障害のある子どもたちが、学校でも家庭でもない、地域で過ごす第3の場(Third Place)と位置づけ、さまざまな体験・経験ができるように、子どもたちが自分で選べる多様なプログラムを用意しています。平日に訪ねた日は、クッキングとパソコンのプログラム。各自好きなほうに参加し、当日のおやつは、クッキンググループが作ったチヂミでした。そのほかプログラムには、アート&クラフト、ヒップホップ、リズム体操、computor02.jpgのサムネイル画像人気が高いという音楽セラピー、フットサル、パティシエ......ある意味、至れり尽くせりです。ただ、あの水遊びの光景を見た目には、地域で過ごすということの意味がちょっと狭く感じられてなりません。子どもの自由をはぐくむ地域力を、障害や健常やといった垣根をとっぱらい、取り戻すすべはないか。「ようこそ!〈事業所訪問〉」にはちょっと似つかわしくありませんが、そんな思いがぬぐえません。



〔不足・不満もあるが、スタッフは大きな存在〕

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 後日、Kids Smileを含む障害児支援の「保護者会」に参加させていただきました。
 この日の保護者会の内容は、夏休みの旅行会や夕涼み会の実施について。夕涼み会は当協会の利用者仲間だけでなく、親の会などを通じて西成区内の当事者親子に参加を呼び掛けるとのこと。みなさん、積極的に意見を出し合い、なごやかな中、「自分たちの事は自分たちで決める」というポジティブシンキングスタイルで進行されていました。

 お忙しい中ではありましたが、サービスのご利用について保護者の方にインタビューをさせていただきました。

■利用するようになったのは、どのようなきっかけですか?
(T様)子ども同士がふれあえる、学校が終わってからの場所が欲しかったので探していました。
(S様)リハビリで通所していたので、そこから利用するようになりました。

■お子さんの変化について
【利用以前】
(T様)学校の友達と、ずっと遊んでいたいようでした。
【利用以後】
(T様)中学生のプログラムが新しく感じられたのか、毎回楽しみにしているようです。
(S様)初日はとても緊張していましたが、今では毎回楽しみにしているようです。

■職員の対応について
(T様)よく相談に乗ってくれて、とても頼りになります。私たち保護者にとって、スタッフさんは大きな存在です。子どもたちも、スタッフさんが大好きみたいです。
(S様)子どもたちには、一生懸命に接してくれてとても嬉しく思っています。

■職員への要望
(S様)スタッフさんもご存じのとおり、私たちの子どもは「伝える」ということができない特性があります。そのあたりを考慮して、送迎してくださったときに簡単でもいいので、その日の様子を教えて欲しいと思います。
難しいとは思いますが、それに替わる方法があればプログラムでの子どもたちの様子を情報配信してほしいですね。

■施設に対しての要望
(T様)にしなりWingへ、プログラムの都合上送り迎えすることが度々ありますが、場所が遠く、「送迎サービスがあれば助かるのに...」と思うことがあります。
(S様)ちょっとした汚れを流せるようなシャワー設備があれば便利なのになぁ。と思うのですが・・・

■その他のご意見
(T様)毎月プログラムの予定表をもらいますが、プログラム内容についての情報が入ってこず、ただ「予定表を見るだけ」になっています。「プログラム新聞」などを発行したり、保護者連絡会等の場でも、プログラムの内容について情報配信をしてほしいと思います。
(S様)他社のように「ショートステイ」ができるようになればいいなと思っています。是非、検討してほしいです。


〔子どもたち、ご家族との信頼関係を大切に〕

sasada01.jpg 主体は子どもたちと保護者のみなさんで、障害児支援スタッフは<見守り><補助>が役割。ご利用者やご利用者家族から求められたときや、それ以外でも絶妙なタイミングで支援を行う「縁の下の力持ち」的な存在。
 障害児支援ユニットリーダーの笹田亜紀子さんに今の想いを伺いました。

■事業の目的を教えてください。
 子どもたちの可能性を伸ばすことだと考えています。

■サービスを提供する上で留意している点はなんですか?
 子どもたちと、ご家族との信頼関係について大切に思っています。
まだまだ足りていないのですが、日常普段の様子などの細かい報告もできるだけ伝えられるようにと考えています。 

■現状の課題を教えてください。
 スタッフの入れ替わりが激しく、ご利用者やご家族が要求している支援が行えていないと感じています。また、スタッフのスキルにバラつきが生じているとも実感しています。

■何か解決策として行動されていますか?   
 スタッフスキルのバラつきが生じていることについては、ベテランのスタッフが中心となり、少しずつですがスキルアップできるように補助しています。また、要求にお応えできていないと感じている件については、まずはご利用者との信頼関係を築くために、スタッフ同士が一丸となってお互いを全力でフォローし合っています。

■福祉を目指している人へメッセージをお願いします。
 介護職・支援職・福祉職員など、呼ばれ方はいろいろありますよね。それに、いざ勉強し始めると「自分にできるかな...」とか不安になっちゃうと思いますが...
★興味があるなら、まずははじめてみる!
★福祉にいちばん大事なのは「人が好き!」
コレだと思います。











利用者さんの声を吸い上げ、「いっしょにやっていこう!」

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cafe-kofukunoki.jpg コミュニティカフェ「幸福の木」

 今回は、西成区ではまだまだ取り組みの少ない精神障害のある方たちのデイサービス、西成障害者会館の「幸福の木」を尋ねました。「幸福の木」は、障害者会館の1階ロビーにあるコミュニティカフェの名前ですが、このカフェもデイサービスの主要な活動場所です。

 生活介護事業は、障害のある方々の日中の活動のサポートをさせていただく事業です。生活介護の中には、中途障害のある方の支援をするデイサービス、知的・発達障害のある方のデイサービス、そして精神の障害がある方のデイサービスがあります。基本的なサービスとして昼食やリハビリテーション、口腔ケア、入浴、送迎などをおこないますが、今回「幸福の木」を訪問したのは、最近、利用者さんが目立って増えており、そのひみつを探る意味もあります。

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〔グルーピングコミュニケーション〕
 「幸福の木」で最も大切にしていることがあります。それは、利用者さんたちの自助グループ活動とグループのコミュニケーションです。そのため、毎日、午前中は「グルーピングコミュニケーション」――いわゆるミーティング――の時間をとっています。  福祉の場合、コミュニケーションもプログラムも、一方的になりがちです。「幸福の木」では、何ごとも利用者さんの声を吸い上げて、利用者さんといっしょにつくっていく、いっしょにやっていくことを重視しています。スタッフが決めたことでも、よく説明して納得してもらってからおこなう。
 jinkenhakubutsukan.jpgたとえば、社会参加活動プログラムとしておこなっている月1回のフィールドトリップ(これも造語です)と呼ぶ館外活動。どこに行くか、なにをするか、みんなが話し合って決めます。スタッフから提案することもあるが、あくまでも利用者さんが決める。意見が分かれたら、多数決。少数の案も、次にやろうね、と。
 グループ活動で、利用者さんたちがすごく楽しみにしているもう一つの月一プログラムが「夜カフェ"つながり"」。月1回、土曜日の夕方からコミュニティカフェ「幸福の木」で、ふだん一人では食べられない鍋料理などを、みんなでワイワイ囲みます。日中は活動場所がokonomiyaki.jpgあるが、夜はさびしく一人で食事、という人がほとんど。はめを外してついつい食べ過ぎてしまうのが心配の種だとか。この活動にはサワサワの利用者さんも参加され、料理も協力し合って作るのだそうです。スタッフは見守り重視です。


〔声かけ、寄り添い、地域での暮らしをサポート〕

 地域生活支援センター「サワサワ」と介護支援「幸福の木」は、姉妹とも、二人三脚ともいった関係にあります。サワサワは相談支援やケアプラン作成が主で、自分で行って自分で帰れる方が対象、介護支援は送迎等
介護が必要な方が対象といった違いはありまtenpura.jpgすが、基本的にはまず皆さんサワサワで相談し、常時介護等の支援が必要な方が幸福の木に通われるということになります。ですから、合同での活動も少なくないわけです。
  「私たちは、声かけがとても大事だと思っています。精神障害のある方ちは孤立化し、引きこもりがちです。それをサワサワが誘い出してくれた。そして、勇気を出してここまで来てくれた。ここでアカンかったら、サワサワがやってきたことが全部むだになる。昨年の春、生活介護全体で、入院する人が多かった。それから、健康を意識するようになった。入院したら長くなる。社会的入院になる可能性がある。再入院の予防が幸福の木のテーマでもある。デイに来てもらって生活リズムを身につける。仲kenkokyositsu.jpg間と会いたいと来てもらえる。ともかく今できることからやろう、と。専門家から見て、こんなことで予防になるかという声もあるだろうが、ともかく今できること。アルコール依存症や統合失調症等の専門的なことはサワサワに任せ、介護支援はもう少しゆるやかな活動で寄り添い、地域で暮らすことを支えていきたい」と語るのは、介護支援チームの岡田チーフ。こうした思いが、グルーピングコミュニケーションやナイトデイ、フィールドトリップ、口腔ケアや健康教室など、さまざまなプログラムを生みだし、利用者さんに喜ばれています。


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cafe03.jpg〔いっぱい好き! いっぱい楽しい!〕
 昼食後、コミュニティカフェ「幸福の木」で団らん中の利用者さんたちにお話を聞いてみました。

◆楽しみなことは?
・月に1回、「つながり」と言って夜の集まりがある。食べ放題で、いろんなものを食べてきた。すき焼き、手巻き寿司がおいしかった。みんながみんなするわ
けではないけど、野菜の皮むきとか、手分けしてやる。
・音楽レクとかあって楽しい。音大の先生(音楽療法士さん)が来てくれて、いろんな歌うたう。水戸黄門の歌とか。

・いっぱい好き! いっぱい楽しい!

◆館外cafe05.jpg活動で楽しかったのは?
・えべっさん。みんなと一緒だから楽しかった。

・海遊館に行きましたよ。じんべえざめ、楽しかった!

◆ここに通う前と今では?
・今が楽しい。食事も食べてるし、お湯にも入っている。
・朝・夕、歯みがいている。
・助かっている部分が多いね。お風呂も入れるし、食事も安いほうだし、その分、お金助かる。余った分、貯金している。何があるかわからないものね。


〔まだ来ぬ人を、来させたい〕
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 幸福の木の利用者さんたちは、本当にいきいきとしている。この雰囲気は、利用者さんとのコミュニケーションをしっかり築いているスタッフの力によるところが大きい。岡田チーフが、「バタバタしていない、落ち着いた雰囲気をつくってくれる」と信頼を寄せるスタッフの中峰さんと澤村さん。中峰さん(写真)にコミュニケ―ションの秘訣は?とたずねると......
「僕の場合、ほとんど自然体です。ただ、精神障害の方は第一印象が大事。新しい利用者さんには、言葉遣いなどわかりやすく、ちゃんと接するように心がけています。」
「中峰さんが休みのときなど、手伝ってな、って言うと、昼食の用意なども自然と助けあってやってくれます。フィールドトリップの時なども、利用者さんからいろいろ気遣ってくれたり......」と、澤村さんも自然体で接し合えるグループのコミュニケーションの良さを語ります。
 幸福の木は、利用者さんが、昨年の1日5~6人から、平均15人近くまで増え、出席率が目に見えて高くなっています。あまりおしゃべり上手とは言えないお二人ですが、それがかえって利用者さんの心を開かせるのかもしれません。
 これからの課題は、ゆるやかな活動といえども、専門性をどう担保していくか。利用者さんへこちらから提案できる活動テーマと選択できるサービスをいかに開発、充実していけるか。そして、西成には、まだまだこうした施設を利用できない方がたくさんいる。彼らをどう誘い出し、声かけし、もっともっと来てもらえるようにするか。そのために現在、SST研修、SV研修、石神所長研修......サワサワとの合同研修への参加などのほか、コミュニティカフェの当事者運営(現在お一人がボランティアで従事)や農園(当面はプランターで)野菜づくり等、自分なりの仕事・生きがいづくりなどのテーマにも取り組んでいます。

 コミュニティカフェ「幸福の木」は、どなたでも利用できます。「まずカフェに来てもらって、デイを覗いてもらって、来てくれるようになったらうれしいかな」とは、中峯さんの弁でした。